“気分にムラがある人”との関わり方【1人で抱えこまない、困り事を言葉にする医院づくり】

こんな時どうすればいい?

「気分のムラがある人」の対応や、医院で「言いづらい」と感じてしまうとき

このコラムを読んでくださっている方も、きっと日々、悩んだり、迷ったりしながら新人教育や人間関係と向き合っておられるのではないでしょうか?

教育がスムーズな医院には、 “考え方の基準”や“教える基準”があります。
もちろん、最初から整っていたわけではなく、『もっと良くしたい!みんなが働きやすくなれば!』そんな思いから、少しずつ形になってきたものです。

岡村乃里恵

歯科衛生士の育成に携わって20年
たくさんの新人さんと出会い、成長していく姿を見てきました。
今回は、つい最近いただいた相談をもとに、岡村なりの考えをまとめてみたいと思います!

目次

「気分にムラがある人に、どう接したらいいですか?」

これは、指導係の歯科衛生士さんから受けた相談でした。

お話を聞いてみると、こんな状況でした。

  • 機嫌の良い日と、そうでない日の差が大きい
  • 返事や反応にムラがある
  • 周囲が気を遣ってしまう
  • 後輩たちへの影響も気になっている

そして、相談してくださったご本人も、

「自分がどう関わればいいのか分からない」
「注意した方がいいのか、見守った方がいいのか迷う」

と、とても悩んでおられました。

一方で周囲からは、

「まあ、あの子は昔からそんな感じだからね」
「悪気はないと思うよ」

という空気もあり、「本当にこのままでいいのかな?」という違和感を抱えていたそうです。

実は、こういう相談をする人ほど抱え込みやすい

今回、相談してくださった指導係の歯科衛生士さんは、周囲の変化によく気づける方でした。

  • 後輩が困っていないか
  • 空気が悪くなっていないか
  • 誰かが我慢していないか

そういったことを、自然と感じ取れるタイプだからこそ、

「このままで大丈夫かな?」
「後輩たちが萎縮しないかな?」

と、一人で気にかけ続けていました。

ただ、こういう方ほど、『抱え込みやすい・我慢しやすい・“自分がやったほうが早い”と思いやすい』というような特徴があるのです。

周りが見えるからこそ、自分の負担は後回しにしてしまうのです。

でも、本来、教育は一人で抱えるものではありません。

だからこそ岡村は、「困っていることを言葉にしていい」と思える環境づくりも大切だと感じています。

「言いづらい」と感じる背景には、優しさがあることも多い

今回、相談してくださった指導係の方も、「本人を傷つけたいわけじゃない」「できればうまくやっていきたい」という思いを強く持っておられましたので、

  • どう伝えればいいのか分からない
  • 関係が悪くなるのが怖い
  • もっと空気が悪くなるかもしれない

と悩み、言葉を飲み込んでいたのだと思います。

特に、『周囲がよく見える人・空気を感じ取りやすい人』ほど、“言わないことで場を保とう”としてしまうことがあります。

ただ、その我慢が続くと、『後輩が萎縮する・周囲が疲れていく・本人も限界になる』状況になることがあります。

だからこそ、

「相手を責めるため」ではなく、“より働きやすい環境をつくるため”に言葉にする

ということが、チームの中で大切なのです。

「気分のムラ」は、性格だけでは片づけられないこともある

こうした相談を受けたとき、岡村がまず考えるのは、「本当に“性格”だけの問題なのかな?」ということです。

もちろん、もともとの気質や表現のクセは人それぞれありますが、

  • 疲労がたまる・睡眠不足
  • 常に緊張状態になっている
  • “できない”が積み重なって自信を失っている
  • 安心して相談できる相手がいない

こうした状態でも、人は余裕がなくなり、反応が不安定になることがあります。
特に歯科医院は、『患者さん対応・時間管理・技術習得・人間関係』など、同時に多くのことを求められる環境です。

一見、普通に働いているように見えても、頭も心もずっと緊張している、という方も少なくありません。

なので、「なぜそんな態度を取るのか?」だけではなく、「今、その人の中で何が起きているのか?」を、一度整理して考えるようにしています。

「性格だから仕方ない」で終わらせない

実際、こうしたケースでは「昔からそんな感じ…」「もともと気分の波があるタイプで…」という言葉を聞くことも少なくありません。

もちろん、『感情表現が強い人・気分が表に出やすい人・思ったことが態度に出やすい人』、というのは、ある意味その人の“気質”でもあります。

ただ、「その人らしさ(気質)」と、「周囲が萎縮してしまう状態」は別で考える必要があります。

特に、“歯科医院は、チームで動く”仕事ですので、誰か一人が常に空気を左右してしまう状態になると、

  • 質問しづらい
  • 相談しづらい
  • 顔色を見ながら働く

そんな環境になってしまうことがあります。
特に、後輩たちは、「今日は話しかけて大丈夫かな?」「機嫌悪くなってないかな?」と、常に周囲の様子を気にしてしまうことがあります。

怒らせないように必要以上に気を遣ったり、顔色を見ながら関わるようになってしまうと、安心して学ぶことが難しくなってしまいます。

だからこそ、『“昔からそうだから・性格だから”仕方ない』ではなく、“医院としてどう関わるのか”を考えていく必要があります。

実際にどう動けばいい

こうした場面では、「誰か一人が我慢する」のではなく、役割を整理しながら動くことが大切です。

指導係ができること

まず大切なのは、一人で抱え込まないことです。
特に真面目な指導者ほど、

「自分の関わり方が悪いのかな?」
「もっと上手くできるのかな?」

と、自分を責めてしまうことがあります。
でも、現場の空気に影響が出ている場合は、個人だけで抱える問題ではありません。
まずは、

  • どんな場面で困っているのか
  • 周囲にどんな影響が出ているのか
  • 本人の様子に変化はあるのか

を整理してみてください。

その上で、院長や幹部、他の指導者と共有することも大切です。
このとき、

「〇〇さんが悪い」ではなく、「現場でこういうことが起きていて、こんなことに困っている」

このように、“状況”として伝えることがポイントです。

院長ができること

院長には、「問題を大きくしないために、早めに状況を把握する」という役割があります。
忙しい現場では、「そのうち落ち着くかな」「様子を見よう」となることもあります。
もちろん見守ることも大切ですが、

  • 後輩が萎縮している
  • 質問しづらい空気がある
  • 周囲が疲弊している

という状態が続いている場合は、医院全体の問題として考えていく必要があります。

いきなり注意や指摘から入らずに、まずは、本人の状況を確認するところから始めます。

まず、“今、何が起きているのか?”を把握することが大切です

また、今回相談を受けた医院さんは、とても忙しく、常に時間に追われ、スタッフが余裕なく動いている状態で、「ちゃんと話す時間が取れていなかった」という背景もありました。

忙しくなると、『後で話そう・落ち着いたら聞こう・今は診療優先』となり、気づけば、“話せないまま”時間だけが過ぎて、誤解や我慢、気疲れが、少しずつ積み重なっていくことがあります。

「最近どう?」
「何か困ってる?」
「後輩との関わりどう感じてる?」

そんな小さな対話の時間があるだけでも、現場の空気は変わることがあります。

教育には「時間確保」も必要だと感じています。
アポイントを切ることは、一見マイナスに感じるかもしれませんが、『教育する・話を聞く・整理する』それぞれの“時間”をしっかり取ることは、長い目で見ると医院全体を支える「未来への投資」でもあります。

  • 挨拶をする
  • 返事をする
  • 相談されたら反応を返す

など、チームで働く上での基本的なルールは、年数や立場に関係なく共有していく必要があります。
院長がその姿勢を示すことで、現場は少しずつ安心して働ける空気に変わっていきます。

本人に必要なこと

そしてもちろん、周囲だけが頑張ればいいわけではありません。
本人自身も、

  • 自分の感情が周囲にどう伝わっているか知ること
  • 機嫌によって態度が変わっていないか振り返ること
  • チームで働いていることを意識すること

が大切になります。
人は余裕がなくなると、思っている以上に態度や言葉に表れますが、自分では気づけていないことも少なくありません。

「周囲がどう感じているか?」を、落ち着いて整理する時間も必要です

また、本人に伝えるときに大切なのは、「機嫌悪いよね」「感じ悪いよね」と感情的に伝えることではなく、例えば、

  • 返事が少ない日は、「後輩たちが質問しづらそうにしていたよ」
  • インカムの声が強い日は、「周りがかなり気を遣っている様子があったよ」

など、“実際に起きていること”として伝えましょう。

本人としては、「そんなつもりじゃなかった」ということも少なくありません。
なので、『どんな場面で、周囲がどう感じていて、どんな影響が出ているのか』を、一緒に整理していく必要があります。

一方的に注意されるだけでは、人は防御的になってしまうので、「どうしたらもっと働きやすくなると思う?」「困っていることはある?」と、本人の話も聞きながら進めることが大切です。

“責めるため”ではなく、「より良いチームで働くため」という視点で話をすることが大切です

「採用」の段階から始まっていることもある

こうした問題は、実は教育の場だけの問題ではないこともあります。

⚫︎新しいスタッフを採用するとき、
『どんな人を採用するのか』
⚫︎医院として、
『どんな人と働きたいのか』

そこが曖昧なまま採用した場合、入職後に「思っていた感じと違った」というズレが起きることもあります。

もちろん、面接だけですべてを見抜くことはできませんが、

  • 周囲との関わり方
  • 感情表現の傾向
  • チームで働く姿勢

などを見る視点は、採用時にもとても大切だと感じています。

※採用時にどんな視点を持つかについては、また別の記事でまとめてみたいと思います。

まとめ

「気分にムラがある人」と関わるとき、『周囲が疲れてしまう・どう接したらいいのか分からなくなる・後輩への影響が気になる』などの悩みが出てきます。

そのようなときは、

  • 背景を整理して考えること
  • 一人で抱え込まないこと
  • 医院としての関わり方を考えること

が大切です。
優しさだけでも、厳しさだけでも、人育てはうまくいきません。

その人自身を大切にしながら、周囲も安心して働ける環境を整えていくこと、そのバランスを考え続けることが、教育なのかもしれません。

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