『もっと勉強してほしい!』は、どうしたら解決する?【新人スタッフが、自ら学び始める医院の共通点 -前編】

院長先生や教育担当者から、よく聞く言葉

「勉強してほしいのに、勉強してくれない」

院長先生や教育担当者の方から「新人スタッフのために環境を用意したのに、なかなか勉強してくれない」という相談が届きます。
実はラプクリでも同じで、院長先生が、「スタッフにもっと成長してほしい」という想いで導入してくださるのですが、

  • 動画を見ない
  • 声をかけないと動かない
  • 最初は見ていたけれど、そのうち見なくなる

そして、「使っていないので」と解約になることも、、、そのたびに、私たちも考えてきました。
600本以上の動画をつくっても、それだけでは学ぶ動機にはならない。

「学べる環境がある」ことと「学ぶ文化がある」ことは同じではない。じゃあ、スタッフが自ら学ぶ医院には何があるんだろう??

いろいろな医院の教育に関わってきて見えてきたことがあります。
今回は、「どうやって勉強させるか」ではなく、人が学びたくなる医院には、どんな考え方があるのか?、について、前編・後編に分けてじっくりお話しさせていただこうと思います。

岡村乃里恵

歯科衛生士の育成に携わって20年
全国の歯科医院で新人教育や院内研修を行いながら、歯科衛生士向け動画教育「ラプレッスン」や、トレーニングセンター「ラプトレOSAKA」を運営しています。

そして、医院での教育を支える「ラプレッスン for クリニック(通称:ラプクリ)」を通して、日々たくさんの医院の「人を育てる」に関わっています。

目次

「勉強してほしい」は、誰の願いでしょう?

少し立ち止まって考えてみたいことがあります。
院長先生は『勉強してほしい』、では、スタッフ本人はどうでしょうか?

  • 「患者さんに、ちゃんと説明できるようになりたい」
  • 「SRPがうまくなりたい」
  • 「この前聞かれたこと、次は答えられるようになりたい」

そんな気持ちが本人の中にあれば、学ぶ理由がありますが、本人が今の仕事にそれほど困っていなかったら?

院長先生から、「これ見ておいてね」「もっと勉強したほうがいいよ」と言われても、本人にとっては「やりたいこと」ではなく、「やらされること」になってしまうかもしれません。

もちろん、私たちは医療に携わる仕事です、学び続けることが必要です。
長くこの仕事を続けていくためにも、学び続けてほしいと私も心から思っています。

でも、20年間歯科衛生士教育に携わってきて思うのは、「勉強しなさい」と言われて、学ぶことが好きになる人は、そう多くないということです。

“学んでほしい”と“学びたい”、この二つは、似ているようで違います

人が自分から動き始めるには、その人自身の中に「学ぶ理由」が必要なんだと思います。

学びの入り口は、「勉強」じゃなくていい

では、その「学ぶ理由」はどうやって生まれるのでしょう?
私は、最初から意気込んで「勉強しよう!」でなくてもいいと思っています。

学ぶきっかけって、実は毎日の臨床の中にたくさんあるんです。

「今日の患者さん、ここだけ出血してたけどなんでやろ?」
「説明したけど、患者さんの顔がいまひとつ納得してなかったな」
「ここのSRP、どうしてもうまくいかない」
「患者さんに質問されたけど、ちゃんと答えられなかった」

こんな小さな「?」が、毎日の診療の中にはたくさんあります。

「もっと勉強しないと」では、なかなか動けなくても、「今日のあれ、なんでやろ?」なら、ちょっと知りたくなる。
私は、そこが学びの入り口でいいと思っています。

  • 調べてみる
  • 先輩に聞いてみる
  • 関連する動画を少し見てみる
  • 次の診療で意識してみる

すると、「あ、前より説明できた」「今日はここが触れた」「患者さんが納得してくれた」、そんな小さな変化が起きる。

それが、「分かるって、おもしろい」「できるようになるって、うれしい」につながります。

勉強することそのものを目的にしなくても、学んだ先に、自分の仕事が少し楽しくなる。
この経験ができたとき、人はまた学びたくなるのだと思います。

「わからない」に気づける人を育てる

ただ、ここでもう一つ大切なことがあります。
そもそも、「自分が何を分かっていないのか」に気づけないと、学びは始まりません。

私がサポートしている医院では、「日々の診療の中にある“なんとなく”を大事にしよう」と伝えています。

  • なんとなく、いつもと違う。
  • なんとなく、うまく説明できなかった。
  • なんとなく、この処置が苦手。
  • 先輩が話していたけれど、実は意味がよく分かっていない。

こういうことって、忙しい診療の中では「まあ、いっか」で流してしまいがちで、次の患者さんが来たら、忘れてしまう。

だから、まずメモに残すことから始めてもらいます。

今日、分からなかったこと
ちょっと気になったこと
聞こうと思ったけれど、聞けなかったこと

どんなに些細なことでもいい、まずは「?」を流さない、最初から自分で全部調べなくてもいいんです。

まずは、先輩に聞く。私が医院へ行ったときに聞く。本人から、「これって、どういう意味ですか?」と聞けるようになる。

そこからでいい、それができるようになったら、次は少し自分で調べてみる。

ラプレッスンに関連する動画があれば、「この動画のここで話してるから、まずそこだけ見てみて」と伝えることもあります。

30分、1時間と勉強時間をつくらなくてもいい。

今日気になったことの答えを、5分だけ探してみる

これも立派な学びです。
こうして、気づく → 残す → 聞く → 調べる → やってみるを繰り返していく。

私が最初につくりたいのは、「たくさん勉強する習慣」ではありません、「わからないことを、わからないままにしない習慣」です。

これは、私たちが行っているセミナーでも同じです。
ただ話を聞いて、「勉強になりました」で終わってほしくない。

セミナーレポートにも、“今日学んだこと”だけではなく、“今日、新しく見つかった『?』”を書き出し、自分で調べる課題を入れています。

  • 「あれ? 私、ここ分かってなかったかも」
  • 「いつもやってるけど、なんでこうするんやろ?」

そんな自分の「わからない」を見つけてほしい。
私はこれを、学ぶための感度を高めることだと思っています。

そして、こんなふうに伝えています、「わからないことが見つかったら、伸びどきやで」。

分からないことがあるのは、悪いことじゃない。気づけたら、そこから伸びられる。

その感度を育てることも、教育する側の大切な役割だと思っています。

学ぶことを「個人戦」にしない

もう一つ大切なのは、学びをその人一人のものにしないこと。

  • 勉強熱心な人だけがセミナーへ行く
  • 意欲のある人だけが動画を見る

それでは、せっかくの学びがその人の中だけで終わってしまいます。

誰かが、「この動画、めちゃ分かりやすかったよ」と話す、すると別の人が、「それ、私も気になってた」と言う。

そして私は、「わからないことを、わからないと言える」ことも、とても大切だと思っています。

「先輩だから、聞けない。」「今さらこんなこと、知らないって言えない。」、そんな空気があると、「?」は表に出てきません。

「それ、私も分からない」「一緒に調べてみよっか」と自然に言える。
学んだことも、わからないことも、みんなに少し話せる。

そんな環境があると、学びは一人の中で終わらず、人から人へ広がっていきます。
私は、それも「学ぶ文化」の大切な一つだと思っています。

新人だけに勉強させない

そして、私はこれも大事だと思っています。

新人さんには、「この動画見ておいてね」「これ勉強しようね」と言う。
でも、先輩は勉強していないし、院長先生も、「自分はもう分かっている」という立場になってしまう。

これでは知らず知らずのうちに、「勉強=まだできない人がするもの」というメッセージになってしまいます。

本当は、経験を重ねるほど、新しい疑問が出てくる、知れば知るほど、「これってどうなんだろう?」が増えていく。

だから、先輩も、「これ知らんかったわ」と言っていい。
院長先生も、「これ、おもしろかったからみんなで見てみよう」と言っていい。
ベテランが新人に、「それ、私も分からない。一緒に調べよっか」と言ってもいい。

上の立場の人が学んでいる姿が見えると、勉強は“できない人の宿題”ではなく、“プロだから続けるもの”に変わっていきます

私は、これが学びの文化をつくるうえでかなり大きいと思っています。

学ぶ文化は、本人の「やる気」だけではつくれない

ここまで書いてきて、私が一番伝えたいことがあります。

スタッフが勉強しないと、「やる気がないのかな」「向上心がないのかな」と思ってしまうことがあります。

もちろん、本人の意欲も関係しますが、でも、それだけでしょうか?

  • 分からないことを出したら、歓迎される
  • 誰かが学んだら、みんなで共有する
  • 先輩も院長先生も学んでいる
  • 学んだことを、実際に試してみる
  • 「どうだった?」と一緒に振り返る人がいる

そんな環境があるのと、「動画あるから見ておいてね」だけなのとでは、同じ人でも行動は変わると思うんです。

だから私は、「勉強する人を育てる」だけではなく、「学びが生まれる医院をつくる」という視点を持ってほしいと思っています。

文化は、誰か一人のやる気でできるものではありません。

医院の中で繰り返される、小さな行動や会話、それが積み重なって、「ここでは分からないことを聞いていい」「気になったら調べる」「学んだら誰かに話す」「やってみたら一緒に振り返る」、そんなことが「普通」になっていく。
私は、それが学ぶ文化なんだと思っています。

じゃあ、医院の中にどう「仕掛ける」?

ここまで、「スタッフに勉強してもらうにはどうしたらいい?」という問いから、いろいろ考えてきました。

でも、もしかすると問いそのものを、「どうやったら勉強してくれる?」から、「どうしたら、この医院に学びが生まれる?」に変えてみてもいいのかもしれません。

とはいえ、「考え方は分かった。でも、実際に何をしたらいいの?」と思われますよね。

次回予告

「今日の“?”」をどう残すのか、どう共有するのか、どうやって一人の学びを医院全体の学びにできるのか、そして、医院としての共通認識や教育の基準をどうつくっていくのか。

次回の後編では、私が実際にサポートしている医院で行っていることも交えながら、その部分を具体的にしていきます。

明日からでも始められる「学ぶ文化をつくる小さな仕掛け」をご紹介します。

この記事が気に入ったら、ボタンからシェア!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次