“同じミスを繰り返す”原因は?新人DH指導で知っておくべきヒントと育成見直しポイント

新人歯科衛生士が繰り返すミス

先日、ある先生からこんな相談を受けました。

  • 新人歯科衛生士が器具の準備で、同じ間違いを何度も繰り返す
  • その場で伝えると「すみません!」と直すけど数日後にはまた同じ…
  • 「何回言ったら覚えるんだろう?」と、ついイライラ

新人教育をしている指導者なら、誰もが一度は経験する悩みですよね。
注意しても直らないと、

  • 「聞いてないのかな?」
  • 「やる気がないのかな?」

と感じてしまいますよね。

今回は、新人歯科衛生士の教育の現場でよくある「同じミスを繰り返す原因と対処法」について、お伝えできればと思います。

岡村乃里恵

歯科衛生士の育成に携わって20年
たくさんの笑顔に出会い、時には悩みながら、日々“教える”という時間と向き合ってきました、
このブログでは、私・岡村が、現場で実践していること、そして「うまく伝わらない」ときのヒントをまとめています!

目次

原因は『お互いの気持ちのすれ違い』

私が新人DHさんに話を聞いてみると、

  • 「頭では分かっているんですけど、先輩や先生に見られてると思うと手が震えてしまって…。」
  • 「“また間違えたらどうしよう”って考えるほど、余計に焦ってしまって…。」

このようにおっしゃって、その新人さんは一生懸命で、むしろ緊張と焦りからミスを繰り返しているように思えます。

教える側は「どうしてまた?」と思い、教わる側は「また間違えたらどうしよう」と不安になっている

お互いの気持ちがすれ違って、“負のループ”に入りやすい場面です。

なぜ同じミスが起きるのか

繰り返しミスが起こる理由は、次のような4つの要因が重なっていることが多いんです。

1.知識不足

理解が曖昧なまま進めている
学習心理学では“理解が浅いと記憶が定着しにくい”とされます。
(例:セッティングの正しい位置を「見て覚えて」と言われただけで、言葉で整理できていない)

2.技術不足

頭では分かっていても、体がまだ追いつかない。
手続き記憶」が定着するには繰り返し練習が必要です。
(例:超音波チップを入れる角度が分かっていても、実際に操作すると力加減が難しい。)

3.環境要因

忙しさやその場の雰囲気に流されて確認がおろそかになってしまう。
(例:診療直前の慌ただしい時間にセッティングをしていて、焦ってチェックを飛ばしてしまう。)

4.心理的要因

注意されることへの不安や緊張で、本来の力が出せなくなる
(例:前に間違えたことを気にして「また言われるかも」と思い、余計に手が震えてしまう。)

繰り返すミスの原因は『シンプル』じゃない

上記のように整理すると、原因は『単なる“覚えが悪い”“やる気の有無”』ではなく、もっと多面的なものだということが分かります

そして、教える側にとって大切なのは「どうしてできないのかを理解しようとする気持ち」ではないかと、私は思っています。

その気持ちがあるだけで、相手も安心して失敗を打ち明けられたり、一緒に解決策を探せるようになるんじゃないかな、と感じています。

実際に関わるときの4つの工夫

1.一緒に原因を探す

「どうしてできなかった?」ではなくどうしたらできそう?と尋ねる。
新人自身が答えを出す“自己決定感”があると、学習意欲はぐんと上がります。

2.仕組みを作る

チェックリストや写真を見ながらでも大丈夫、と伝える。

脳の“ワーキングメモリ”の負担を減らすと、安心して作業でき定着もしやすくなります。
以前働いていた院長から教わったことの1つに、

  • たまにしか使わない物の使い方は覚えなくていいから、その代わりに一目瞭然でわかる使い方マニュアルを蓋の裏や見えるところに貼っておく

というのがあって実戦していました、マニュアルを作成すると覚えてしまっていましたが(笑)

3.小さな成功を認める

「今日は順番を覚えてたね!」と、できた部分を具体的に褒める。

「強化理論」でいう“正の強化”が、「次も頑張ろう」という気持ちにつながります。

4.ユーモアで緊張をほぐす

失敗した時こそ、「これで覚えるチャンスが増えたってことやな(笑)」と少し笑いを添える。

笑いは緊張をやわらげ、ミスを恐れすぎない雰囲気をつくります。

強化理論とは

ここで少し、強化理論について、心理学からの視点も添えて解説しますね!

『強化理論』とは、心理学で学習や行動を説明するときに使われる考え方です

「人はどういうときに行動が続きやすいか」を示したものです。

“正の強化”とは

行動したあとにプラスの刺激(嬉しいこと・ご褒美)が与えられることで、その行動が定着しやすくなること。
つまり「できたことを認めてもらえる」「褒められる」などが“正の強化”です。

歯科衛生士教育の場面での例

  • 新人さんが正しく器具を準備できたときに「今日は順番をちゃんと覚えられたね!」と具体的に褒める
  • それによって「またやろう」「次もできるように頑張ろう」と思える

教える側の気持ちも大切に

  • 「何度も同じことを言うのは疲れる」
  • 「イライラしてしまう」

そんな気持ちになるのも自然なことです。

大切なのは、自分を責めすぎず「今日はまだこの段階なんだ」と割り切ること。
教育は短距離走ではなくマラソンのようなもの。
その日の失敗も、振り返れば学びの材料になります。

まとめ:多面的にみる、一緒に探す

今日からできる小さな一歩としておすすめなのは、ミスが起きたときに「どうしてそうなったのか?」を一言メモしておくこと。
時間が経つと「なんでだったかな?」と忘れてしまいやすいですが、都度メモを残すことで、後から見返すとミスの共通点が見えてきたり、意外な気づきに繋がったりします。

新人歯科衛生士が同じミスを繰り返すとき、それは必ずしも“怠けている”からではありません。

知識や技術がまだ十分でなかったり、環境や気持ちの面で余裕がなかったり――いろんな要素が重なっていることが多いんです

だからこそ、

  • 叱るよりも“一緒に原因を探す姿勢”が大切ではないでしょうか
  • 教育は、“繰り返しの失敗”をどう受け止めるかで、その後の成長の質が変わってくる

日々、新人さんと向き合う中で私はそう感じています。

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