新人歯科衛生士が“自分からは動かない”本当の理由|自分で動けるスタッフを育てるための7つの視点

新人の歯科衛生士が、自分から動いてくれない…

新人教育をしていると、必ずといっていいほど出会うタイプが

「自分からは動かないタイプ」

  • 「言われたことはきっちりやってくれるけど、自分からは動かない」
  • 「次の行動を待っている」

そんな姿に、院長先生や先輩としては、「もっと自分で考えて動いてほしい!」と感じることもあるのではないでしょうか。

ここで大切なのは、「なぜ言われるまで待っているのか」を見極めること。

ただ「やる気がない」のではなく、その背景には、“動けない理由”が潜んでいることが多いのです。

今回は、そんな歯科医院でよくある新人さんが動けない理由を1つずつ解消する方法をお伝えできればと思います。

岡村乃里恵

歯科衛生士の育成に携わって20年
たくさんの笑顔に出会い、時には悩みながら、日々“教える”という時間と向き合ってきました、
このブログでは、私・岡村が、現場で実践していること、そして「うまく伝わらない」ときのヒントをまとめています!

目次

新人歯科衛生士に「社会人と学生のギャップ」に気づいてもらう

新人さんにとってのこれまでの環境では、「言われたことを言われた通りにやる」ことで十分に評価されてきたかもしれません。
一方で、社会に出ると、それだけでは高い評価にはつながらないこともあります。

もちろん医院によって方針の違いはあると思いますが、社会としては「自ら考え、行動できる人」が求められています。

このことを、教育のスタートとして伝えることが大切です。

「丁寧に仕事をこなす力はすごく大事。その力をベースに、もう一歩先を見て動けるようになってほしい」

“医院として何を期待しているのか”を、やさしく伝えることで、新人さんにとっては新しい視点が生まれます。

私が出会ってきた「自分から動かないタイプ」の多くは、“言われるまで動いてはいけない”と思っている方がほとんどでした。

そんなときは、

「自分から動いてもいいんだよ」

と一言伝えるだけで、相手が少し驚いたように「そうなんですか?」と返してくれることがあります。

その小さな反応の中に、動くきっかけの芽が見えることがあります。

② 強みを伝えることで、信頼の土台を築く

「Aさんは、仕事がとても丁寧で確実。頼んだことをきちんと仕上げてくれるから、安心して任せられる」
こんなふうに、

強みを言葉にして伝えることが大切です。

人は「信頼されている」と感じた瞬間に、“次の一歩を踏み出しても大丈夫”という安心感が生まれます。

その信頼が、前向きに動くための土台になります。

③ 「どうしてやらないの?」ではなく「なぜ動けないのか?」を探る

動けない新人さんの背景には、こんな理由が隠れていることがあります。

  • 情報不足:次に何をすればいいか分からない
  • 目的の理解不足:作業の“意味”や“背景”が分からず、動く理由が見つけられない
  • 自信のなさ:「間違えたらどうしよう」「叱られたくない」という不安
  • 過去の経験:以前の職場で「余計なことをすると怒られた」などの記憶がブレーキになっている

私が実際に関わった中で、こんな場面がありました。

「次に何をするか気付いていた?」と尋ねると、「はい、気付いていたのですが…やっていいのかわかりませんでした」と答えてくれたのです。

そのとき私はこう伝えました。

「ここでは、一歩二歩先を読み、動ける人を育てていきたいんだよ。気付いたなら、次は動いてみよう!

そして先生や先輩方には、

「もし違っていたとしても、動けたことをまず褒めてあげてください」とお願いしました。

動いたこと自体を認めてもらえると、新人さんは安心して“次の一歩”を踏み出せます。

④ 「学習性無力感」を取り除き、安心して動ける場をつくる

心理学には「学習性無力感」という考え方があります。

  • 「どうせやっても怒られる」
  • 「動いても報われない」

という経験を重ねると、人は、少しずつ“やってみよう”という気持ちが遠のいていきます。

むか〜しむかしの私にも、実はこの経験がありました。
「言われたことしてたらいいやん」と思っていた時期を、今も覚えています。

そんなときに、「さっきの動き、よかったね」と声をかけてもらったことがありました。
その一言で、「動いたことはよかったんだ」「ちゃんと見てもらえていたんだ」と思えたことを、今でもよく覚えています。

あのとき感じた安心感が、前を向いて働く力につながっていった気がします。

だからこそ、今はこう思います。
「動いてよかった」という体験を、教育の中で意識的に積ませてあげること。

「動いたことを褒める」「間違えても、チャレンジしたことを評価する」

この小さな積み重ねが、学習性無力感をやわらげ、“自分で考えて動ける力”を少しずつ育てていきます。

⑤ 考える習慣を育てる問いかけを増やす

  • 「この仕事、もっとよくするにはどうすればいいと思う?」
  • 「この状況で、どう動くのがいいと思う?」

こうした問いかけを繰り返すことで、“自分で考える習慣”が少しずつ育っていきます。

「工夫してね」だけでは伝わりません。

何をすればいいのか分からない新人さんには、行動例を具体的に示しましょう。

「ユニットが空いていたら、○○を整えておいてくれると助かるよ」
「この資料、気づいたことがあったらメモして残しておいていいよ」

“やっていいこと”を明確にすること

で、新人さんは安心して動けるようになります。

⑥ 気づいた行動には、すかさずフィードバック

「さっき○○してくれてたね。気づいて動けたの、すごくよかったよ!」

こうした言葉をかけると、新人さんは「見てもらえている」と感じます。

「言ってもやらない」ではなく、「やったことを見逃さない」

この積み重ねが、受け身から“自ら動けるスタッフ”への成長を支えます。

⑦ 「人育ては自分育て」新人指導の中で自分も磨かれる

正直、先輩や指導者は「いちいち言うのが疲れる」と感じることもあります。
その気持ちはとてもよく分かります。

けれど、

その「いちいち言う覚悟」を持つことが、教育においてはとても大切。

伝え方ひとつで、相手の受け取り方は大きく変わります。

叱るように言うのではなく、未来を見ながら、「あなたならきっとできる」という信頼を込めて伝えたいですね。

まとめ:受け身から主体性へ

「言われるまで動かない新人歯科衛生士さん」は、決して“できない人”ではありません。

動けない背景があり、そのブレーキを一つずつ外していけば、必ず“自分で考えて動ける人”へと成長していきます。

  • 社会人の求められる姿を伝える
  • 強みを言葉にして信頼の土台を作る
  • 動けない理由をヒアリングする
  • 心理的背景を理解し、安心して動ける場をつくる
  • 考える習慣を育てる問いかけを増やす
  • 気づいた行動にはすぐにフィードバック

教育は「人育て」であり、同時に「自分育て」。


新人さんと向き合う時間は、実は私たち自身が成長するチャンスでもあります。

私も日々、生徒や新人さんと接する中で「なるほど」と気づかされることがたくさんあります。

「教えるつもりが、逆に学ばせてもらっている」

そのたびに、人と向き合うことで自分も磨かれていく”
そんな想いを胸に、今日も指導の場に立っています。

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